化粧品技術者を経験したことのあるオトコが化粧料について語ります。化粧料は、広い意味では、医薬部外品も含みます。化粧料は、広い意味では、以下のものを含みます。
ここで熱く論じる化粧料は、基礎化粧料に絞ります。化粧水、乳液、美容液、クリームなど、皮膚に潤いを与え、清浄に保つことを目的とする化粧料です。化粧品技術者として化粧品を開発した経験がある「男性」が、化粧料を「理屈」を交えて語っていきます。
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オトコによる化粧品学習(1) - yugusuki’s blog(ゆぐすきブログ)
オトコによる化粧品学習(2) - yugusuki’s blog(ゆぐすきブログ)
オトコによる化粧品学習(3)<続き>
4.化粧料として安定させる成分(防腐剤、pH調整剤、酸化防止剤、界面活性剤など)
5.使用感や使いやすさのために配合されている成分(粘性付与剤など)
6.有効成分(医薬部外品の美白剤に配合されている成分など)
4.化粧料として安定させる成分(防腐剤、pH調整剤、酸化防止剤など)について
●防腐剤
化粧水を例にとりますと、1回使ってフタを開けてしまったのに、置いておいても腐らないことを不思議に思ったことはありませんか。化粧水は、微生物の栄養となる成分(水やグリセリンなど)をたくさん含んでいますので、微生物が繁殖しやすい環境そのものといえます。
仮に、化粧水のなかで微生物が繁殖してしまうと、悪臭が発生したり、想定外の成分が微生物によって生み出されたりします。そんな化粧水を誤って皮膚に付けてしまうと、皮膚が荒れたり、皮膚が炎症を起こしたり、トラブルとなります。そのような微生物の繁殖を止めるために、防腐剤が入っています。その代表選手は、いわゆるパラベンです。最近は、様々な防腐剤がつかわれているようです。
確かに、パラベンのような防腐剤が、皮膚に悪影響を及ぼすことは、あるかもしれません。防腐剤フリーといった化粧料も販売されています。しかし、上述しましたように、防腐剤は重要なものですので、仮に、配合された防腐剤で皮膚トラブルが起きないのであれば、防腐剤を敬遠する必要はないといえます。すべての防腐剤をやめてしまう、となった場合には、すべての化粧料は、用事調整のかたちで販売されることになりそうです。
●pH調整剤
pH(ピーエイチ、昔はペーハーとも言われました)という用語を聞いたことがあると思います。酸性、アルカリ性、中性、という用語に関連します。中性付近であれば、皮膚には時に何の問題もないといえます。一方、アルカリ性が極端に強くなったり、酸性が極端に強くなったりすると、皮膚が荒れてしまうこともあります。
上述した微生物の繁殖とも関係してきますが、例えば、微生物が繁殖してしまって、微生物によってpHが酸性に変わったり、アルカリ性に変わったりすると、大変なことになります。化粧品も工業製品の1種ですから、作ったときのpHがそのまま維持されるのが、品質安定性という点では理想的です。
仮に、作ったときのpHが時間とともに変わってしまいそうになっても、そのpHをほぼ一定に維持させる成分があります。これがpH調整剤です。食品の表示成分にも記載されていることがあります。
「クエン酸ナトリウム」といった記載があれば、pH調整剤である場合が多いです。
酸化とは、モノがさびること、という表現をよく目にします。抗酸化成分という言葉を、食品サプリメントの分野でよく目にしますので、ご存知の方も多いと思います。化粧品に配合されている成分のなかには、酸化されやすいものがありますので、酸化されないように「抗酸化剤」(つまり酸化防止剤)を入れておくことも必要です。
代表的なものに、「ビタミンC」があります。アスコルビン酸ともいいます。自分自身が犠牲になって酸化されることによって、守るべき成分の酸化を防いでくれます。酸化防止剤が酸化してしまっても、害のある成分に変化しないため、汎用されています。
抗酸化成分は、体内で機能すると、かなり有効なものとなりますので、「酸化防止剤」とはいわないです。しかし、ビタミンCは、少しだけ配合すると「酸化防止剤」であり、有効な量を配合すると、「抗酸化成分」となります。難しいです。
「ビタミンC配合!」と強調した化粧品でも、決して「肌の抗酸化剤」といった記載はされていません。あくまで「酸化防止剤」という位置づけです。このあたりは、薬事法のおはなしなので、割愛させていただきます。
●界面活性剤
「界面活性剤」という言葉は、すぐに”洗剤”と結びついてしまうため、化粧料の使用者にとっては、敬遠したい成分です。しかし、化粧料を開発する技術者にとっては、界面活性剤の知識は、避けて通れません。そもそも化粧料には、一般的に水が配合されており、水に溶けない成分もいろいろと配合されています。このような成分を、水とともに、1つの化粧料のなかに入れ込むこと、しかも、数年間にわたってずーっと入れ込んでおくこと、は、界面活性剤の助けを借りなければ、なかなかできません。では、化粧料のなかにはすべて洗剤成分が入っているのか?という疑問がわきます。
しかし、ひとことで界面活性剤と言っても、その種類はさまざまです。洗剤のように汚れを根こそぎ取ってしまう強力なものもあれば、食品と同じように体内で消化されてしまうものもあります。つまりは、水と、(例えば油のような)水になじみにくい成分とを、なじませてしまう性能を発揮するのが、界面活性剤ということになります。マヨネーズも、界面活性剤(乳化剤ともいいます)の助けを借りて、できあがっているのです。界面活性剤すべてが悪者というわけではない点について、強調いたします。どうしても界面活性剤を避けたい場合、化粧料を使う代わりに、水で肌を潤した後に、スクワランで肌パック、、、ということになります。面倒ですが。。
5.使用感や使いやすさのために配合されている成分(粘性付与剤など)について
例えば、増粘剤があります。一般的には、高分子化合物です。増粘剤を少し入れると、トロトロの液のように仕上がり、多く入れると、指で取れるようなジェルやクリームのように仕上がります。化粧水のようにシャバシャバでない方が、高級感が出ます。また、好きな量を肌に塗布しやすくなります。また、増粘剤を入れると、一般的にはネットリした使用感に傾きますので、適度に入れることで、シットリした使用感に仕上げることができます。
増粘剤は、肌に塗ったあとも、肌の上に残ります。肌に残るので、使用後の小実感にも効いてきます。増粘剤がほどよく肌に残っていると、シットリ感が持続することになりますので、大切な役割を担うことにもなります。増粘剤が肌の上に残っていると、増粘剤自体が水分をとらえて、水分の蒸発を抑えます。よって、増粘剤は、保湿剤の役割を果たすことも多いと考えられます。
さらには、増粘剤を配合すると、一般的には、化粧料の安定性を向上させることができます。安定性とは、例えば、クリームを高温で長時間放置したとしても、分離しないような性能です。また、化粧水を低氷点下などの低温で放置しても、沈殿物(オリともいいます)が生じないような性能です。増粘剤を配合することによって、高温や低温で長期間放置しても、そのままの外観を保てる可能性が高くなります。
このように、増粘剤は、主な1つの役割だけを担っているわけではなく、複数の役割を担っているといえます。よって、どんな増粘剤を、どれだけ配合するかは、化粧料の性能(保湿性能、使用感、安定性など)を決める重要な問題です。配合量は、比較的少ないですが、かなり重要な役割を担っています。
6.有効成分(医薬部外品の美白剤に配合されている成分など)について
1つ1つ説明していくと興味深いのですが、美白剤だけ取り上げても、たくさんありすぎて、簡単には説明しきれません。かいつまんで例を挙げますと、有効成分としては、美白化粧料の有効成分、薬用せっけんの有効成分、入浴剤の有効成分、などなど、他にも様々な分類で、様々な有効成分が、厚生労働省によって認可されています。医薬部外品とはすなわち「薬用」ということになります。
薬事法上は、医薬部外品となるものは、入浴剤なども含めて、いろいろとあります。基礎化粧品の部類で「薬用」としてなじみがあるカテゴリーは、「薬用美白化粧料」です。いわゆる美白剤(美白のための有効成分)については、ネット上でも詳しく説明されているようです。
小まとめ
使用感、製品の安定性などを保つために、化粧料には、水や油以外にも、様々な成分が配合されています。それら成分がバランスを保ちつつ、良い製品ができあがっています。